登山中にヒザの骨折や脱臼が疑われるときの応急処置

ankle injury

登山中はさまざまな怪我をする可能性があります。その中でも特に大きな怪我として、骨折や脱臼が挙げられます。適切な応急処置を行わなければ、後遺症が残ったり生命の危機に陥ったりしかねません。

登山中の骨折や脱臼で多い箇所は膝です。そこで今回は、膝の骨折や脱臼に焦点を当て、応急処置などについて紹介します。

膝が骨折や脱臼しやすい理由

登山中に膝にかかる負担はとても大きいです。山道を歩く数時間は、膝が体重を支え続けることになります。また軽く跳躍する機会も多く、着地の衝撃を吸収するのも膝の役目です。そのため山の中腹に差し掛かる頃には、膝は疲労した状態になっています。

関節や筋肉が疲労すると、次に力が掛かってくる骨も脆くなってしまうので、転倒して膝に急激な負荷がかかると、骨折や脱臼をしやすいのです。岩場での転倒や高い場所からの転落などで強打してしまうと、重症になるケースも少なくありません。

骨折の判断

骨折が疑われる場合は、症状を速やかに確認しましょう。打撲と区別するために膝を曲げてみます。骨折の場合は膝を上手く曲げられず、発生直後から痛みが継続する特徴があります

一方で打撲の場合は、膝を動かすことができますし、あまり痛みがないことも多いです。また骨折すると、膝全体が大きく腫れます。両足を揃えて大きさを比べてみると分かりやすいです。打撲の場合は膝全体ではなく、打った箇所だけが部分的に腫れるのが一般的です。

応急処置の方法

骨折であることが確認できたら、膝を固定しなければなりません。膝上と膝下を固定して膝が動かないようにします。固定には添え木と包帯を使用します。添え木には、膝上から膝下まで届く長さが必要です。短すぎるとずれてしまったり、固定できる箇所が少なくなるので、臀部から足首まで届くほど長ければ安定します。

手ごろな木の枝を見つけられない場合は、トレッキングポールで代用しても良いでしょう。足と添え木を包帯できつく巻いて固定します。包帯がない場合は、タオルやハンカチを使用しましょう。

脱臼の場合

痛みが継続して膝を曲げられない場合は、脱臼の可能性もあります。膝が脱臼すると、皿が正常な位置からずれてしまうことが多くありますが、その中でも外側にスライドしてしまうケースがよく見られます。

脱臼は骨が折れたわけではないので、軽視しがちな人も多いでしょう。確かに骨を手で押すだけで治る場合もありますが、油断してはいけません。脱臼した骨が移動する際に、周辺の神経や血管が傷ついていることがあるからです。また強引に押して治そうとすると、そのときに傷つけてしまうことも珍しくありません。無理に動かさず、骨折と同様の方法で固定しましょう。

動けない場合の対処はどうすべきか?

骨折してしまったり脱臼の程度がひどく、その場から動けなくなってしまった場合はどうするべきか?

まず無理に患者を背負って移動したりするのは厳禁。滑落などの二次災害の危険が極めて高くなるため、体格や体力に自信があっても慎むべきです。

登山道で邪魔にならないよう安全な山側に移動し、同行者がいる場合は荷物をフリーにして最寄りの小屋まで救援を求めるのが確実です。

待っている人は体温の低下などで衰弱しないように、保温マットなどを被って待ちます。適度に行動食などを食べておくと不安も和らぎます。

単独登山の場合には、電波が届く場所であれば携帯電話などで救援を呼ぶしかありませんが、他の登山者がいる場合には小屋まで伝令をお願いします。

応急処置は備えが大切!

登山中に骨折や脱臼をした場合は、今回紹介した応急処置を行うようにしましょう。重要になるのは事前準備です。骨折や脱臼をする機会は多くありませんが、少なくとも包帯は携行しておくことをおすすめします。

包帯は切り傷や捻挫などの治療にも使用できます。その他にもテーピングテープや鎮痛剤も持っていると、応急処置の際に役立ちます。

足をひねって捻挫した場合の応急処置