山というのは何かしら不思議なことが起こります。
長年山やってると嫌でも奇妙な体験をします。幸いにも今のところ大きなトラブルはありませんが、今までで最も冷や汗をかかされた体験をお話します。
怖いの苦手な人は見ないでね。
あれは今からもう10年近く前になります。
大学のサークルの合宿にて、南アルプスが主峰北岳に向かう途中の出来事でした。
場所は有名な草滑りの手前、白根御池小屋という場所です。
私はサブリーダーとして先陣を努める役割で、当時私のパーティーは女性ばかり。リーダーも女性でしたので、何かとしっかりしなければならないポジションでした。
ここで私たちはテントを張ってここで一泊。鳳凰三山からの縦走の疲れを癒していました。
何か変な気は感じていた・・・
実はここに着いたときから何かおかしな気分になっていました。
テント場は調度池がある目の前。白根御池というだけに大きな池があります。水場というのは心霊ポイントとして有名らしいです。
基本0感の私はそんなこと気にするもなくテントを張っていましたが、妙な胸騒ぎが止まりませんでした。
その時は縦走の疲れだろうと、早めに寝ることにしました。
食事を終え、辺りが闇に落ちたので話もそこそこに消灯。皆疲れのためにぐっすり休むはずでしたが・・・・
ここで最初の異変が起き始めます。
テントに何かがコンコンとあたる音が定期的にしていました。
最初は小さな音でしたので、虫か何かが跳ねているのだろうくらいにしか思ってませんでした。ここは草木が豊富で虫も沢山飛んでいたので、テントの外カバーのところに大きめの虫が入り込んだという認識でした。
そのまま寝るつもりでしたが、昼間感じた妙な感覚が再び襲ってきて、寝入ることができませんでした。
ここで第2の異変が・・・
1時間ほど経過したでしょうか?テントをたたく音が、コンコンからぽんぽんとまるで人の手で叩いているような音に変化し始めたのです。
風でも強くなったかな?と少し外を見ましたが、辺りは完全に無風。草一本なびいていませんでした。
リーダーも異変に気づきだす・・・
何か変なことが起きていると思い、寝袋を抜け出して座って構えていると、リーダーが声をかけてきます。
「何か変な感じがずっとしている」と。
どうやら私だけではなかったようです。他の部員は寝ているので、そっと2人で意識を集中させて状況を見守ります。
相変わらず音はでている。テント内をライトで照らしても虫らしき影は全く見えません。
小康状態が続いたので、再び寝袋に入ることにしました。
ここで衝撃的な事態に見舞われます。
私はテントの入り口側をガードするように寝ていました。リーダーは反対側の小入り口。
そこで、テントの内側に入れていたはずの登山靴がガサガサと動き出します!
靴はビニル袋の上に置いていたので、誰かが動かさなければ音などしません。相変わらず外は無風なので風の悪戯でもなさそうです。
ガサガサガサガサと靴が動く音。
さすがにこれには私も飛び起き、慌てて靴を確認。なんと一番隅に置いていた靴が入り口の真ん中に・・・
他のパーティーのいたずらと思い、テントの外を覗きましたが人影は誰もなし。
当然テント場なので回りは寝静まっており、奥まったところに建てていたので誰かがトイレに行く時に通るところではありません。
念のため靴を中に入れ、再び出方を伺います。
私とリーダーは完全に言葉を失っていました。私たちの異変に気づき、他のメンバーも起きだしてしまいます。
それを見計らったかのように再びテントを叩く音がし始めました。
全員が恐怖のどん底に・・・
私とリーダーは寝るに寝れず、他のメンバーに状況を説明しながら、入り口ににらみを利かせます。
これはさすがに何かやばいものが近づいていると感じ出しました。
そいてついに恐れていたことが・・・
テントの周りを、ザッザッザッと歩く音がし出したのです。
幸い動物の類ではなく、山靴で歩くような音でした。
そして再び入り口に置きっぱなしにしていたビニールがガサガサ言い出します。
意を決した私は登山ナイフ抱えて一気に外に飛び出しました!
辺りは闇夜。
静寂が包んでいます。
すばやく足音がした方向に飛び込み、状況を確認しましたが何もいない・・・
最悪だったのが、私が外で見張っているにもかかわらず、今度は反対側で足音がするとの声が!
慌てて反対に周りライトを向けますが何の変化もない・・・
相変わらず無風にもかかわらず、テントをぽんぽん叩く音もしているというのです。
これはさすがに外に一人でいるのはやばいと感じ、テントに戻って入り口を封鎖。
靴も全てテント内に仕舞い、リーダーと二人で見張りを続けました。
一時叩く音は収まったので、そのうちに他のメンバーは寝たようですが、
私とリーダーは更なる恐怖を感じたのです。
テントそのものがゆさゆさ揺さぶられることが計5回。
いつテント内に何者かが襲ってくるのか、生きた心地がしませんでした。
なんとか無事に夜明けを迎える
しばらく続いたアタックも、次第に間隔が長くなっていき、
気づいたら薄明るくなってきていました。
同時に音も一切無くなり、やっと肩の荷が下りましたが、焦りと不安で高揚していたので一睡もできませんでした。
出発は早い時間だったので、他のテントの人も起きだしました。
念のため他のグループにも確認して回りましたが、そのようなことは一切知らない人ばかり。
どうやら私のテントだけが対象となったようです・・・
山小屋の人にも確認しましたが、この近辺では大きな事故もないしそんな話は聞いたことが無いとのこと。
結局あの夜の出来事は何だったのか?
真相は闇に埋もれてしまいましたが、その後のテント泊では変なことは一切起こらず、
全員無事に行程を終えることができました。
山で心霊体験をすることは良く聞きますが、今回話したことは全てが実録です。
熊であれば外に出たときわかるはずですし、人であれば一晩中何かするような変人があの場所にいるとは思えません。
この手の話は慣れないので駄文でしたが、夏の夜長に見てほしい少しぞっとする実話でした。