夏でも山は冷える!軽視できない「低体温症」の症状と対策

夏山では低体温症で体調を崩す人が毎年必ずいます。標高が高い山の気温は考えているよりも低く、さらに登山時独特の状況も加わって体は意外と冷えやすいのです。

自分は大丈夫だと体力を過信せず、低体温症の症状や対策を学んで、楽しい登山での不測の事態を防ぎましょう。

体の中心の温度が下がれば低体温症に

低体温症は、大げさに言えば凍死の手前の状態です。しかし気温がマイナスの時のような非常に寒い場合にだけ起こるものではありません。低体温症は体の中心部の温度が35度以下になると起こるので、夏の登山でも起こる可能性があります。

低体温症の症状は、始めは疲れた状態と似ています。体が重くて足運びがおぼつかない、意識がもうろうとしてうまく考えられない、同行している人の歩みからも遅れがちになるといった症状です。

初期段階では体が強く震えて熱を作り出そうとしますが、症状が進み体温が下がると震えが止まり、意識が弱くなっていくのが特徴です。

汗と風で体温が奪われない工夫を

低体温症が登山で起きやすいのは、疲労で体が熱を作る力が低下した上に、体が冷えるための条件が重なるからです。登山では、たくさん汗をかきます。汗が山に吹く強い風で冷やされて、体温が奪われるという状況が頻繁に起こっているのです。

登山の際に通湿性の高い登山ウェアを着れば、低体温症の防止効果が高まります。しかしウェアを着ただけで安心というわけにはいかず、冷えてきたと感じたら上着を重ね着するといった、自分自身での意識した体温調節も大事になります。荷物を増やしたくはないかもしれませんが、もしもの場合に備えて替えの服も1枚は持って行きましょう。

風が強いと一気に体温を奪われるので注意

御嶽山

登山で低体温になりやすい状況に、尾根道や稜線で吹き付ける風があります。汗で濡れた体に一気に風が吹いて体温を奪うため、自分で意識している以上に冷えてしまうことがあります。

登山時に風を避けるのはなかなか難しいですが、空気を通さないレインウェアを着るなどで影響を軽くすることはできます。

低体温症には4つの対処が有効

低体温症で体の震えが止まるのは、熱を作り出すだけの体力がなくなったことを表しているため、非常に危険な状態です。そうなる前に、休んで体をくるむなどして体温を回復させ、熱のエネルギーを作るためにカロリーの高いものを食べるといった対処をしなければなりません。

低体温症に有効な対処方法は、食べる・隔離・保温・加温です。カロリーのある炭水化物やあまい食べ物を食べ、風雨を避けて、汗で濡れている服は脱ぎます。そして体を包んで保温し、お湯などをわかして外からも熱を与えることが大切です。

休憩する時にはエネルギーをきちんと取る

休憩時には、林の中などの風を避けられる場所を選び、カロリーを取ってエネルギーの補給を心掛けましょう。

山では思った以上に体力を消耗するので、エネルギーの補給はしっかり行わなければなりません。高カロリーで食べやすいものが、少量でも体内ですぐにエネルギーに変わります。チョコレートやようかんなど自分の好みに合わせて、手軽に食べられるものを用意しましょう。

低体温症の備えをして楽しい登山を

低体温症は、最初は疲れただけのように感じられますが、そのまま体温が下がり続けると命にも関わってしまいます。山では起こりやすいことを理解し、防止のための対策をしっかり行って、登山を楽しい思い出にしましょう。