登山をしているときに手首や、肩を中心とした腕の付け根が痛くなったり、ビリビリと痺れたりした経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
少し休むと症状が和らぐものの、登山ザックを背負うと再びつらい症状がぶり返し、山行中ずっと不快な症状に悩まされることも少なくありません。こうした状態にはどのように対処すればよいのでしょう。
リュックサック麻痺について
登山中に手首や腕の付け根に起きる不快な症状は「リュックサック麻痺」と呼ばれていて、リュックサックの肩ベルトにかかる重みが、長胸神経や腋窩神経などを圧迫することで起こるとされています。
主な症状として、手首や腕の付け根の痛みや痺れのほか、腕が上がらなくなったり、肘が曲げにくくなったりすることなどがあげられます。
リュックサック麻痺への対処法
歩いているときに手首や腕の付け根に痛みが出てきたら、ウエストベルトやチェストベルトを調整して、登山ザックの重みが肩に集中しないように調整しましょう。登山ザックが下がりすぎていると、腰で支えられずに肩に力が集中します。ベルトの長さを調整し、肩と腰の2点で力を分散させるように背負います。
肩のベルトはしっかり締め、ザックと背中をなるべく密着させるように背負うこと。隙間が空きすぎていると、ザックの重みが後ろに引っ張られるようになり、肩の負担が増えてしまうのです。
我慢していると痛みが強くなることがありますので、気づいたときに早めに調整するのがポイントです。特に痛い部分があるときには、肩ベルトの間にタオルを挟んで荷重を分散すると楽になることがあります。また、登山計画を一部見直して、軽量のリュックで行動すると症状が和らぐ場合もあります。
ポールによる休憩も効果的
登山中にトレッキングポールをついて歩いているときには、ちょっとした休憩に活用するのも効果的です。リュックサックを降ろすほどではないけれど少しだけ立ち止まって休むときに、リュックサックの底部にポールを置いてリュックの重みを支えると、肩ベルトにかかる重さが分散されます。肩がスッキリと楽になるのが分かりますよ。
下山しても症状が続く場合
リュックサック麻痺は下山すると症状がほとんどなくなることが多いのですが、なかには下山してからも症状が治まらないケースもあります。
痛みやしびれが長引く場合には、整形外科を受診するとよいでしょう。治療は安静に保つことが中心になりますが、痛みのない範囲で肩の周りの筋肉を強くするリハビリをしたり、ビタミン剤を服用したりすることもあります。
山行ごとにリュックを点検
リュックサック麻痺が起きてしまったときには、早めに対策を考えることが大切です。ウエストベルトやチェストベルトを調整したり、肩ベルトの間にタオルを挟んだりするとよいでしょう。
同行者がいる場合はザックのセッティングを目視しながらチェックし、不自然になっていないかを確認しあいましょう。自分の体力に合わせて、荷物をできる限り軽量化することも効果があります。