冬山登山はよく知った山でも命取りになる・・・ 体験談投稿

福井にある越前甲という標高1200Mほどの山に4人で登ったときのこと。
雪のない季節には比較的簡単に登れる山なので、何度か頂上を踏んでいる山だ。

天気予報は21日は朝のうち晴れ、次第に崩れて夕方より雪になるとの事だ。
低気圧が日本海に二つ来ている。二つ玉低気圧だ。

3月で残雪期の為、夏道は使わず、バリエーションルートを登る。
アイゼンを装着してピッケルを使用する。

登りは天気がまだ良くて快調に高度をかせいだ。頂上近くの急斜面に取りつこうとすると、アイゼンを装着していないメンバーがいることに気付いた。
おまけにピッケルではなくストックを持っている。北アルプスや冬季の登山経験が豊富なメンバーだったのでまったく心配していなかった。

登山を継続するか協議したところ、ピッケルで雪面をカットしてキックステップで登るとの事なので、ピークへ向かった。
ちょうどこの頃から天気は崩れだし、黒い雲が多くなってきた。アイゼンを装着しているメンバーは比較的早く進めるが、そうでない人は慎重になっているので、遅い。時間がかかる。

私たちは頂上に着いてしばらく待つとようやくアイゼンを装着していないメンバーが登ってきた。しかし、頂上は風が強い。おまけにガスにまかれて周囲の景色が見えなくなってきた。
25000図で下山口を確認しようとしたが地図さえ強風のために広げられない。そうこうしている間に、メンバーのうちの一人が、登ってきた方角と思える方に下りはじめた。私たちも続いた。しかし、崖に行き当たってしまった。そこは登ってきたルートとは違ったのだ。

この山のバリエーションルートは崖に囲まれたルートなので地図での確認が必要なのに、天気が崩れたことで気が焦ってしまい、確認を怠ってしまった。これは大きな失敗だった。
周囲は完全にガスにまかれている。この山のどこにいるのか、現在の地点が特定できなくなってしまった。時間はまだ2時30分ころだったが、無理して下山すれば滑落の危険も大きいのでビバークする事に決めた。

慎重に移動して雪洞を掘る。初めは竪穴を掘り始めたが雪で埋まってしまうので横穴に変更した。スコップは一つしか持ってきていない。スコップ一つでははかどらないので
ザックに入っていたフライパンで雪をか掻き出す。

ようやく4人が入れる雪洞が完成した。一晩、この雪洞で寒い思いをして過ごした。家には携帯電話で心配しないように事情を説明した。
翌朝、天気は回復して、無事に下山することが出来た。

雪のある季節であれば地元の良く知っている山とは言っても、装備をお怠ってはいけないと大いに反省した。